谷川地区伝統の料理を伝えるはずが。「ういろう」に、そして「おこしもん」へ
谷川地区伝統の料理を伝えるはずが。「ういろう」に、そして「おこしもん」へと続く。
今から少し昔の頃、谷川の地区では行事があると公民館で炊き出しをしていたと聞く。
何十人分をしかも数種の献立を作るのであるから大変であったに違いない。
しかし今やそれを語れる人も資料もない。谷川に伝わる伝統料理が知りたいと思ったが情報は少なかった。
会食時に使っていた漆器のお膳に漆器のお椀類、酒器揃が揃っていたがすでに処分して久しいと聞く。公民館のキッチンの水屋に何枚かある塗の角盆が当時の様を残しているだけである。時代と共に消えて行くのは惜しいことである。
料理の詳細についてはわからなかったが、ただ村のご婦人方の交流の場であり、コミニュケーションの場であったということだけは強く印象に残った。
社会の情勢が伝統的な慣習を変えていった。
結局私が知りたい献立やレシピにはたどりつかず頓挫した。
2年前私はこのページで「おじゅんって知ってる」という記事を書き、その中で私が覚えている当時の献立を改めて列記した。
〇煮物
(ぜんまい、こんにゃく、油揚げ、干し椎茸、高野豆腐、人参、ごぼう、小芋、だいこん、)
〇和え物(季節の青菜や海草類、大豆の加工品やこんにゃくなどの白和え)
〇ご飯(白飯や炊き込みごはん。巻きずし)
〇香のもの(だいこんのつけもの)
〇汁もの(甘い味噌味の豆腐汁)
〇酒
これらを漆器のお膳に手際よく盛り付け、私はツル手が付いた銅の汁鍋で甘い豆腐汁を椀に注いだ姿を覚えている。
その後、昭和も40年代になると仕出し屋さんに頼む時代がきてそして今は宴会会場丸ごと借りて人が移動する時代である。
本当は谷川の伝統料理を書きたいのに書けない。そんな事情から逆情報を書くのもありかな。もしかしたらこの記事により、谷川の情報が得られる?なんてことはないにしても関心は持って貰えるかもなどと思い付きの逆発想である。
こんな訳で愛知県の郷土伝統食を紹介することに行きついた訳で。
私が長く住んだ愛知県の郷土食や名物について記す。
詳しくは前号の「ういろう」に記載している。
もしかして、一人でも名古屋に関わる方が読んでくれたらそれもいい。
そこで今日紹介するのは珍しい祝い餅菓子である。
愛知県では、「おこしもん」「おこしもの」[おしもん」とかで親しまれている。春の節句に各家々で作られるのである。
赤、黄色、緑に着色し見た目も華やかな型押し餅で、蒸し立て熱々を砂糖や醤油をつけながら食べる。家族や親しい仲間と賑やかに食べる時間は至福の時間であった。
かたくなったら七輪の炭火で焼いて食す。のどかで平和な時代があった。
今は、七輪って何?ていう時代である。
余談であるが今は小学校3年の社会科「昔の暮らしと今の暮らし」の学習で、火起こし体験を学ぶほど昔の道具になってしまったが、昭和40年代までは各家庭になくてはならない道具であった。私の家でもすき焼きをするときは必ず使っていた。
話を戻す。
「おこしもん」とは、餅米や米粉を練った生地を木型に入れて成形し型からはずす。
このとき木型を床面に対して垂直にたたき取りはずすとき、その様がまるで生地が起きるように外れることからこの名がついたとも言われる。
節句の頃になると、町の和菓子店にはおめでたい形の色とりどりのおこしもんが並ぶので見ているだけでも楽しい。
今は店で買う人が多いが昔はどこの家でも子どもの健やかな成長を願い作っていた。
今回私も久々につくってみた。画像がそれである。
木型の絵柄はおめでたいものが多くそれぞれの家に伝わり何代も大切に使われている。
長い年月使い込まれて茶渋色になりそれが家の歴史や時代を感じさせる。
最近は子どもが喜ぶ漫画のキャラクターも豊富に売られているが、木型がなくても工夫次第でそれなりのものができるのも面白い。
画像のものは久しぶりに取り出した私の木型である。
作り方は家によっても多少の違いはあるが簡単である。餅米や米粉を熱湯で練り、それを木の型枠に入れて型抜きし蒸す。
もち米や白玉粉を使うと柔らかくまた米粉の割合が多いとかたくなる。
家で作ると時間とともにかたくなるが、店で買うおこしもんはいつまでも柔らかいので私は長年不思議でならなかった。
冷めてもかたくならない「おこしもの」はどうやって作るのかいろいろ調べている内に、「うき粉」なるものを知った。
少し前までは西脇市内のスーパーマーケットにも売られていたがどういう訳かこの頃その商品がない。うき粉とは麩を作る過程でできる副産物で菓子作りに重宝する。ネットで購入できる。
1材料
餅米の粉、上新粉(飯米の粉)、うき粉、砂糖、塩、食用色粉3色、熱湯
2道具
おこしもん木型、まな板、蒸し器、ボール、しゃもじ、蒸し布
3作り方
①粉を耳たぶのかたさに練る(熱湯)
②練った粉から一部(全体量の9分の1位)取り出し、赤、黄、緑の3色の生地を作る。
(白と合わせて4色)
③木枠に、この3色の生地を好みでおき、その上から白い生地をのせてしっかり押さえてかためる.
④まな板の上で中身を取り出す。取り出し易いようにあらかじめラップを敷く方法もある。
⑤蒸し器で蒸す。
春のまだ寒さが残る頃、かたくなったおこしもんを焼く匂いが家々から漂うという光景は今は昔の話になった。
ぴんこすずめ